親のための行動経済学お小遣い術

子どもが自分で決めた目標を守れるように 行動経済学「コミットメントと一貫性」をお小遣い教育に活かすヒント

Tags: 行動経済学, お小遣い教育, コミットメントと一貫性, 目標設定, 金融教育

はじめに:自分で決めたはずなのに続かないのはなぜ?

子どもに自分でお金の使い道や貯金の目標を決めさせたのに、計画通りに進まない、途中で諦めてしまうといった経験はないでしょうか。これは子どもに限らず、大人でも新しい習慣を始めたり、目標を達成したりするのが難しいと感じることはよくあります。

子どもがお小遣いの管理を通して、計画性や自己管理能力を身につけることは大切です。しかし、ただ目標を決めさせるだけでは、なかなか行動が伴わないことも少なくありません。ここでは、行動経済学の「コミットメントと一貫性」という考え方を取り入れ、子どもが自分で決めたお金の目標に向けて粘り強く取り組むためのヒントをご紹介します。

行動経済学「コミットメントと一貫性」とは

人間には、「一度何かにコミット(関与・誓約)すると、そのコミットメントと一貫した行動をとろうとする」という強い心理的な傾向があります。これを「コミットメントと一貫性の原理」と呼びます。

例えば、 * ダイエットを始めることを友人に宣言すると、一人で始めるよりも続けやすくなる。 * 特定の政党への支持を表明すると、その政党の政策に賛成しやすくなる。 * ある商品を「良い」と一度評価すると、その後もその評価を変えにくくなる。

このように、私たちは自分の言葉や行動に一貫性を持たせようとします。これは、社会的な信用を得たり、自分自身のアイデンティティを確立したりする上で重要な役割を果たすからです。

お小遣い教育に「コミットメントと一貫性」を応用する

この「コミットメントと一貫性」の原理は、子どものお小遣い教育にも応用できます。子どもが自分で決めたお金の目標やルールを、「自分自身のコミットメント」として強く意識できるようになるほど、その目標達成に向けて行動しやすくなります。

具体的な応用方法を見ていきましょう。

1. 目標を「子ども自身」に決めさせる

目標設定において最も重要なのは、子どもが「自分で決めた」という感覚を持つことです。親が一方的に目標を決めるのではなく、何のために貯金したいのか、どんなものにお小遣いを使いたいのかなど、子どもの意見を丁寧に聞き、実現可能な目標を一緒に見つけるプロセスを大切にしてください。

自分で選んだ目標だからこそ、「これを達成するぞ」というコミットメントが生まれやすくなります。

2. 目標を「見える化」して「表明」させる

目標を心の中で思うだけでなく、具体的な形にすることがコミットメントを強化します。

これらの「見える化」や「表明」は、子どもにとって自身の目標に対する「公的なコミットメント」となり、一貫した行動を促す力になります。

3. 定期的に振り返りの機会を作る

一度コミットメントしても、時間が経つと薄れてしまうことがあります。そこで、定期的にお小遣いの状況や目標の進捗について、子どもと一緒に振り返る時間を設けることが有効です。

この振り返りの時間は、目標へのコミットメントを再活性化させると同時に、計画通りにいかなかった場合の原因を一緒に考え、次の行動に活かす貴重な機会にもなります。決して叱る場ではなく、「どうすれば目標に近づけるかな?」と一緒に考えるサポートの場としてください。

実践上の注意点

まとめ:一貫性を育むサポート

行動経済学の「コミットメントと一貫性」の原理をお小遣い教育に応用することは、子どもが自分自身で決めた目標を達成する力を育む上で非常に有効です。

子ども自身が目標を決め、それを具体的な形にして表明し、定期的に振り返る機会を持つこと。これらのサポートを通して、子どもは自分自身の言葉や行動に対する責任感を学び、将来、お金に限らず様々な目標に対して粘り強く取り組むための大切な基盤を築くことができるでしょう。親子で楽しみながら、この行動経済学の知見をお小遣い教育に取り入れてみてください。