みんなが持ってるから欲しい!行動経済学で教える子どもの「周りに流されない」お金の使い方
周囲の影響とお金の使い方
お子様が友達や周りの人が持っているものを見て、「あれが欲しい」「みんながやってるから自分もやりたい」と言うことはよくあります。これは、子どもの社会性の発達の中で自然な心理ですが、お小遣いの使い方にも大きな影響を与えることがあります。
周りのお金の使い方に流されてしまうと、本当に欲しいものではなかったり、予算オーバーしてしまったりする可能性があります。このような「周りに流される」心理は、実は行動経済学でも説明されている現象です。ここでは、行動経済学の視点からこの心理を理解し、お子様が自分らしい、賢いお金の使い方を学ぶためのヒントをご紹介します。
行動経済学で見る「周りに流される」お金の心理
人は、特に情報が少ない状況や、何を基準に判断すれば良いか分からない状況で、他者の行動を参考にしたり、多数派の選択に安心感を覚えたりする傾向があります。行動経済学では、このような心理をいくつかの概念で説明しています。
例えば、「社会的参照(Social Reference)」とは、他者の行動や意見を自分の判断や行動の基準にすることです。また、「バンドワゴン効果(Bandwagon Effect)」は、多くの人が支持しているものや流行しているものに、自分も乗りたいという心理を指します。
子どもはまだ自分自身のお金に関する価値観や判断基準が十分に形成されていません。そのため、「友達が買っているから良いものだろう」「みんなが持っているなら自分も欲しい」といったように、周りの行動や流行に強く影響されやすい傾向があります。お小遣いを何に使うか決めるときに、自分の本当に欲しいものや必要なものよりも、周りの影響を優先してしまうことがあるのは、この社会的参照やバンドワゴン効果が働いているためと考えられます。
これは、お子様が悪いわけでも、意思が弱いわけでもありません。人間の脳に備わった、社会の中でうまくやっていくための自然な傾向の一部なのです。しかし、お小遣いを通して、この心理に気づき、上手に付き合っていく方法を学ぶことは、将来の金融リテラシーを高める上で非常に重要になります。
「周りに流されない」お金の使い方を教えるには
では、お子様が周りの影響にただ流されるのではなく、自分の頭で考えてお金を使えるようにするには、どのような働きかけができるでしょうか。行動経済学の知見も踏まえながら、具体的なヒントをいくつかご紹介します。
1. なぜ欲しいのか、対話を通して考える習慣を育む
「みんなが持ってるから欲しい」と言われたとき、すぐに「ダメ」と否定するのではなく、一度立ち止まってお子様の気持ちに寄り添う姿勢を見せることが大切です。そして、「どうしてそれが欲しいの?」「それは本当に〇〇にとって必要なもの?」「それを使うとどんな良いことがあるかな?」といった問いかけを通して、なぜその商品や経験に価値を感じるのか、お子様自身に考えさせる機会を作りましょう。
これは、行動経済学でいう「熟慮(Deliberation)」を促すプロセスです。衝動的な感情や周りの影響による判断(ヒューリスティックスによる安易な判断)だけでなく、一度冷静に立ち止まって考えることで、より合理的な判断に近づける手助けとなります。
2. 自分にとっての価値基準を見つける手助けをする
周りの行動はあくまで参考の一つであり、自分にとっての幸せや満足はお金の使い方によって異ることを教えます。例えば、「〇〇は、こういうことに興味があるよね。お金を使うなら、どんなことに使うと一番楽しいかな?」といった対話を通して、お子様自身の興味や価値観に気づかせることを促します。
行動経済学では、人の幸福は絶対的な金額だけでなく、参照点(基準)によって感じ方が変わることが示されています。周りの友達を「参照点」としてお金を使うと、常に他人と比較してしまい、たとえ欲しいものを手に入れても満足感が持続しにくいことがあります。お子様自身が「自分にとって本当に価値があること」を見つけることができれば、周りの影響を受けにくくなり、より高い満足感を得られるお金の使い方ができるようになります。
3. 目標設定と計画をサポートする
「欲しいものがたくさんある」「すぐに使ってしまう」というお子様には、お小遣いの使い方に具体的な目標を持たせるのが効果的です。例えば、「〇〇円貯めて、本当に欲しいあの本を買う」「今月は△△円だけ、自由に使える分としてとっておこう」といったように、目標金額や期間を決めるサポートをします。
目標に向かって計画的にお金を使う経験は、目先の誘惑(周りの友達が買っているものなど)に負けず、長期的な視点を持つ力を養います。これは、行動経済学の「自己コントロール(Self-control)」の力を育む上で非常に重要です。目標を達成できた時には、その成功体験をしっかりと褒めて、自己コントロールが良い結果につながることを実感させてあげてください。小さな成功体験の積み重ねが、将来の賢い選択につながります。
まとめ
子どもが周りのお金の使い方に影響されるのは、成長過程で自然に見られる心理です。しかし、行動経済学の知見を借りてこの心理を理解し、適切な働きかけを行うことで、お子様は「周りに流される」のではなく、自分の価値観に基づいた、より満足度の高いお金の使い方を学ぶことができます。
対話を通じて自分で考える力を育み、自分にとって本当に価値のあるものを見つける手助けをし、そして目標設定と計画のサポートを行うこと。これらを通して、お子様がお金と上手に付き合い、将来にわたって豊かな選択ができるようになることを応援していきましょう。