お小遣いの目標達成、あと一歩を後押し!行動経済学「ゴール目前効果」で子どものやる気を保つヒント
お小遣いを貯める「あと一歩」が難しいと感じたら
子どもがお小遣いを貯める目標を立てたものの、途中で諦めてしまったり、目標達成までなかなか続けられなかったりすることは珍しくありません。特に目標金額が大きかったり、期間が長かったりする場合、子どもだけでなく大人でもモチベーションを維持するのは難しいものです。
なぜ、目標が遠いとやる気が続きにくく、逆に目標が近づくと急に頑張れることがあるのでしょうか。この人間の心理には、行動経済学の知見が役立ちます。今回は、「ゴール目前効果」という考え方をお小遣い教育に応用し、子どもが貯金の目標を達成する力を育むヒントをお伝えします。
行動経済学で考える「ゴール目前効果」とは
ゴール目前効果とは、目標が近づくにつれて、目標達成に向けたモチベーションや努力の度合いが高まる現象を指します。例えば、カフェのポイントカードで、あと1個スタンプを押せば特典が得られるという状況になると、急にそのお店に行きたくなる、といった経験はないでしょうか。これは、目標(特典獲得)が間近に迫ることで、それを達成したいという気持ちが強くなるために起こります。
この効果は、目標までの距離が視覚的に確認できる場合や、残りのタスクが少ない場合に特に顕著になります。人間は、目標への道のりが短くなると、「あと少しで達成できる」という感覚を得て、最後のひと押しをするためのエネルギーが湧いてくる性質があるのです。
子どもが貯金目標を達成するために「ゴール目前効果」を応用する
このゴール目前効果を、子どもがお小遣いを貯める際のモチベーション維持に活かすことができます。
1. 小さな目標を設定する
大きな貯金目標(例:半年後に高価なゲーム機を買う)だけを設定すると、子どもにとってはゴールがあまりにも遠く感じられ、途中で諦めやすくなってしまいます。そこで、大きな目標をいくつかの小さな中間目標に分割することが有効です。例えば、「最初の1000円を貯める」「貯金箱の半分まで貯める」といった具体的なステップを設定します。
小さな目標を一つずつクリアしていくことで、子どもは達成感を繰り返し味わうことができ、「あと少しで次の目標達成だ」というゴール目前効果をより頻繁に感じられます。これにより、モチベーションを維持しやすくなります。
2. 進捗を「見える化」する
貯金箱にお金を入れていくだけでは、目標までの道のりや現在の進捗が感覚的にしか分かりません。そこで、貯金の進捗を「見える化」することが非常に重要です。
- 貯金グラフ: 目標金額と現在貯まっている金額を棒グラフや折れ線グラフで描き、色を塗ったりシールを貼ったりしていく。
- 貯金シート: 達成額に応じてマス目を塗っていくシートを用意する。すごろくのようにゴールまでの道のりを示すのも良いでしょう。
- 貯金通帳: 実際に銀行や子ども向けの金融機関で通帳を作り、入出金を記録する。金額が増えていく様子が記録されることで、実感を得やすくなります。
視覚的に目標への距離が縮まっていくのを確認できると、「あとこれだけで目標達成だ!」という意識が芽生え、ゴール目前効果によってやる気が引き出されます。以前の記事でも「見える化」の重要性をお伝えしましたが、特に目標達成の文脈ではその効果が大きくなります。
3. ゴールが近づいたら一緒に確認・声かけをする
目標達成が近づいてきたら、親が意識的に子どもの貯金状況を一緒に確認し、「あと〇〇円だね!」「もうすぐ目標達成だね、頑張ったね!」といったポジティブな声かけをすることで、子どもの「ゴールが近い」という意識を強めることができます。親からの承認や励ましも、子どものモチベーションにとって大きな力となります。
また、目標達成直前の段階で、一緒に貯金箱を開けて数えたり、通帳を記入したりするのも、ゴールが間近であるという感覚を強くし、最後のひと頑張りを促すことに繋がります。
まとめ
子どもがお小遣いを貯める過程で、目標達成の難しさに直面することは、お金との付き合い方を学ぶ上で大切な経験です。行動経済学の「ゴール目前効果」のように、人間の行動原理を知ることで、親は子どもがモチベーションを維持できるよう、環境を整えたり、適切なサポートをしたりすることができます。
大きな目標を小さなステップに分け、進捗を分かりやすく「見える化」し、そしてゴールが近づいたら一緒に喜びや達成感を共有する。こうした工夫を通じて、子どもは貯金の目標を達成する成功体験を積み重ね、お金を管理する力だけでなく、目標に向かって努力し、それを達成する自信を育んでいくことができるでしょう。